タロットで22のお題(XI. 剛毅)
XI. 剛毅(強い意思の力)
燃えるような夕日の下、好きだと言われた。
「……お兄ちゃんになにか言われたんですか」
「いや、クロウから事情を聞いた」
いつも浮かべている笑顔が消え去っていくのがわかる。
事情、つまりそれは、
「……ならわかってるでしょう。あたしの命は後五年もないんです。
それなのに、どうして好き、だなんて言うんですか」
「後悔したくないからだ」
目をそらすことを許さない、強い瞳にとらわれる。
「人はいずれ死ぬ。そんなのは当たり前だ。
それよりも伝えるべきことを伝えずに後悔したくはないんだ」
この事態を恐れていたのだ。バルクは優しい。そして強い。
だから、いずれ来る別れを理解していても、
それが障害にはならないだろうと予測はしていた。
――でも、当たって欲しくなかった。
そんな優しいバルクを傷つけたくはなかった。だって自分も――。
「未来の話はどうだっていい。
今、お前が俺のことをどう思っているか、聞かせてくれないか」
ずるい。そんな風に言われたら。
「そんなの、好きに決まってるじゃ、ないですかぁ!」
絞り出した声は自分でも驚くほど揺れていた。
「でも、あたしは、きっとバルクさんを傷つけます、だから、」
「ダメ、って言うなよ。……もう俺は覚悟を決めたんだ」
手をとられ、そのまま抱きしめられた体は固く、温かだった。
(四層終盤・アイカ)