ギルド『アルファ』探索日誌

主に世界樹の迷宮シリーズのプレイ記録。

一周年&PV一万突破記念(4. その始まり、七日目)


「……君、」
誰かの声が聞こえる。あれ?僕は……、
「……!」
一気に意識が覚醒する。
飛び起きると、見知らぬ男性が自分を見下ろしていた。
浅黒い肌、金の髪。瞳は……オレンジ?
宝石のようなその色に、思わず魅入ってしまった僕に向かって、
目の前の人物はゆっくりと口を開いた。
「……起こしてすまない。
あなたが『アルファ』の方だろうか」
その言葉に自分がここにいた理由を思い出し、
そして彼がここにいる理由に思い至った。
「ご、ごめんなさい、寝てしまっていて……。僕が『アルファ』の者です。
冒険者ギルドの掲示を見てきて下さったんですか?」
「ああ」
短くそう答えた彼は、少し表情を緩めた。
「今はギルドリーダーが樹海に出ているので、
戻ってくるまで待ってもらうことになりますけど……」
それから『アルファ』について説明する。
立ち上げ時の四人、そこに加わった自分たち三人。
まだ設立して日が浅いこと、最低でも十人以上、
メンバーを集めようとしていること。
簡単に説明を終えて一息吐く。
言うことを言い切ってしまうと、途端に彼自身への興味が湧いてきた。
パッと見ではわからなかったけど、かなり背が高そうだ。
年齢はよくわからないけど、現在アルファの
最年長であるバルクよりも年上に見える。
装飾は見慣れないものが多く、また荷物も必要最低限といった感じで、
遠くから旅してきたのであろうことがうかがえる。
と、不意に視線が合う。というより、さっきから僕を見ていたみたいだ。
「観察は終わったか?」
その口調はどこか楽しげで、怒ってはいないとはわかるけど、
気づいてたならなにか言ってよと思ってしまうのはただの八つ当たり、
というか、それならそれで。


「何処か帰ってきたようだな」
吹っ切れた僕の質問責めに一つ一つ答えていたゲイルが、ふと顔を上げた。
つられて玄関の方へ顔を向けると、玄関先から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
出迎えるまでもなく直ぐに5人とも顔を出し、
ひどい怪我がないのを見てとってほっとする。
「ただいま。……あなたは、うちを訪ねてきてくれたのか?」
最初に口を開いたのは、やはりシアンだった。肯定を返したゲイルに言葉を続ける。
「俺はシアン、『アルファ』のリーダーだ」
「ゲイルだ。……彼女から、大体の話は聞いている」
彼がそう言った途端に、戻ってきた五人は驚愕の表情を浮かべた。……一体何に?
「フィオ、」
エリンが硬い声で問いかける。
「あなた、自分の性別を言ったの?」
「え、」
思わず固まって記憶をひっくり返す。性別なんて、言ってないけど。
……そういえば、さっき『彼女』って……。
「って、えええええぇぇぇぇぇ!!!」
思いっきり叫んでゲイルを見ると、何が起きているのか
全くわからない様子で僕たちを見ている。
「やっぱり……ゲイル、ちょっと聞いてもいいかしら」
「ああ」
「どうしてフィオが女の子だってわかったの?」
多分この場にいる(ゲイル以外の)みんなの気持ちを代弁した質問だった。
そりゃそうだ。僕たち三人が『アルファ』に入ることになった時、
イカ以外の三人はアイカが言うまで男の子だと思ってたし
(そしてそれがいつものことだ)、アイカにしたって確証が得られなかったから、
初対面の僕に抱きついて確かめるなんて暴挙をやらかしてる。
が、その質問はゲイルにとっては不可解なものだったらしく、困惑気味に答えた。
「……どうしてもなにも、女性にしか見えないが」
……想像を絶するその答えに思考が停止した。
ヒュウッと口笛を鳴らしたのはバルクだ。
「へぇ、……なあ、ゲイルはうちに入ってくれるつもりで来てくれたんだろ?」
「ああ。そうさせてもらえると嬉しい」
「それはこっちのセリフだ。アンタみたいに
眼の良い奴がいてくれるとすげえ助かる。シアンもいいよな?」
「ああ」
驚きで呆然としている間にトントン拍子に話が進み、
結局ゲイルは『アルファ』の一員になった。


僕に向かって『女性にしか見えない』なんて言った人は生まれて初めてで。
だから、もっと知りたいと思った。
それが始まり。